【本】阿部和重『プラスティック・ソウル』-タイトル負け



Jブンガクなるもの(?)の代表作家に祀り上げられた著者の、初の連載小説。


雑誌編集者からゴーストライターの競作を依頼された男と、その周辺を描いているのだが、主人公の暴走するがごとき妄想で、物語の始まりも終わりもない。


アイデンティティの問題は著者の他の作品の根底に見て取れる。

しかし、本作品は書き連ねることの苦痛しか感じることしかできなかった。いくつかの印象的なシーンも、上手く活きておらず、ドラック漬けのジャンキーの戯言に陥っているように思える。


プラスティック・ソウル=偽物の魂は、ソウルシンガーがミック・ジャガーを揶揄した言葉だが、作品内容はタイトル負けしている。

【阿部和重 記事一覧】
【本】阿部和重『無情の世界』-饒舌なわりにわかりやすい
【本】阿部和重『ABC戦争』-なんでしょこれは と、へらっと笑ってみる
【本】阿部和重『アメリカの夜』-デビュー作を読んでみる
【本】阿部和重『ニッポニアニッポン』-トキをめぐる革命闘争の記録は、なんともやるせない幕切れ
【本】阿部和重『インディヴィジュアル・プロジェクション』-J文学って何だった

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【本】連城三紀彦『恋文・私の叔父さん』-再読に耐えうる名作品集



ミステリ作家としても著名な連城三紀彦の手による恋愛小説集。


収録作品は、映画やテレビ、演劇で作品として取り上げられており、ドラマとして優れている。

どの物語も謎をはらんだ展開をするのは著者ならではだろう。


余命いくばくもない昔の恋人のため、妻子を捨てた男、そしてその恋人と妻の交友を描いた、直木賞受賞のタイトル作はもちろん素晴らしいのだが、老女の儚い想いを謳った「紅き唇」は地味ながら泣かせ技が光っている。


登場人物が30代から40代のためか、自身が20代の頃は読んで彼らの心境を理解でなかったが、数十年たった今は痛いほど良くわかる。

読者の年代によって様々な見方ができる、再読に耐えうる名作品集と思う。


文章の昭和な感じも今となっては良い味に感じる。






【連城三紀彦 記事一覧】
【本】連城三紀彦『暗色コメディ』-だまし絵のような
【本】連城三紀彦『どこまでも殺されて』-奇妙奇天烈な設定
【本】連城三紀彦『黄昏のベルリン』-捻りに捻ったトリッキーな展開

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【本】長嶋有『エロマンガ島の三人』-ゆるゆるの旅,



タイトル作は、雑誌の企画”エロマンガ島でエロマンガを読もう”で現地(実在するそう)を訪れた編集者ら三名のゆるゆるの旅が描かれた短編。

観光地としては楽園とは程遠い島だが、そこにくらす人々精神的な豊さが、これまたゆるゆると表現されている。


ゆるゆるの中に小さなざわめきを感じるのが著者の作品。

本作品もB面ともいうべき同時収録作「青色LED」で明らかになる。


長編「パラレル」に登場する顔面至上主義者が主役の「ケージ、アンプル、箱」は、官能小説だそうだが、湿度は少なめ。


その他、著者としては珍しいSF風の作品も収録されている。

「アルバトロスの夜」で描かれる世界観がすばらしい。


【長嶋有関連 記事一覧】
【本】長嶋有『パラレル』-折り合いをつける中年ライフ
【本】長嶋有『ぼくは落ち着きがない』-淡々と
【本】長嶋有『タンノイのエジンバラ』-そこはかとない寂しさが漂う短編集
【本】長嶋有『泣かない女はいない』-No, woman, no cry
【本】長嶋有『ジャージの二人』-ぐだぐだゆるゆるな二人のまったり感
【本】長島有『猛スピードで母は』-愛おしさでいっぱい

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【本】今野敏『隠蔽捜査』-シリーズものとしての以降の展開が楽しみ



警察小説では概ね敵役のキャリア官僚が主役という本作品。


明晰な頭脳で事件を一刀両断といった現実離れしたものではない。

主人公は、東大至上主義、権力志向ぷんぷんで、正論ばかり振り回す魅力が乏しい男だ。

しかし、読み進めるうちに、主人公なりの一貫した正義感が明らかになり、その変人ぶりがいとおしくすらなってしまう。


警視庁を揺るがす報復殺人。そして、息子のドラック吸引の発覚。

幾重にも輻輳する困難に、敢然と立ち向かう孤高の官僚魂へ拍手喝采せざるを得ない。


脇役キャラがたっていて、シリーズものとしての以降の展開が楽しみだ。


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【本】吉田修一『怒り』-本作品のテーマは



東京八王子で発生した殺人事件。現場に残されたのは「怒」の血文字。


冒頭からぐぐっと引き込まれてしまうが、場面は変わり3人の謎の男を中心に3つのストーリーが描かれ、群像劇の様相を呈していく。

彼らと殺人事件の関わりは?

三者三様の心の闇が垣間見えるものの、上巻ではそれぞれが交錯することはない。



実在の殺人事件を想起させることから、結論は自ずと明らかなようだが、はてさてどうだろう。


3人の男の周辺、そして事件を追う刑事に、どのような人間模様が展開されるのか、期待が最高潮に高まったまま下巻へ続く。



殺人事件の容疑者とおぼしき三人の男。


彼らに心を揺さぶられる人々を中心に物語は進む。

予期した群像劇とは違い、三つの離れた場所で、登場人物に関係などなく別々に語られるわけだがが、破たんすることなく大きな流れを形づくる著者の技はお見事。


心に闇を抱えた人々が、愛と信頼に苛まれるという重苦しい作品で、決して読後感はよろしくない。

ぶっつりと断ち切られたかのような事件の顛末は、いくつかの謎を残してしまった。


ただ、本作品を見るべきは殺人犯そのものではなく、真の信頼が如何に得難いものであるかがテーマであるように思う。


【吉田修一 記事一覧】
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【本】吉田修一『横道世之介』-忘れられない物語
【本】吉田修一『悪人』-吉田修一さんの凄腕が堪能できる
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【本】吉田修一『女たちは二度遊ぶ』―男性目線で描く女性のあれこれ
【本】吉田修一『7月24日通り』-夢想女子の恋愛話し
【本】吉田修一『ひなた』-適度な距離感―適度な距離感
【本】吉田修一『東京湾景』―恋しくて愛おしくてを感じない乾いたところがリアル
【本】吉田修一『あの空の下で』―短編「流されて」の最後の一文できゅんきゅん
【本】吉田修一『熱帯魚』-なんとなくイヤなヤツら
【本】吉田修一『日曜日たち』-家族や恋人との関係において、何がシアワセかってことを、ふと考えさせられる一冊
【本】吉田修一『長崎乱楽坂』-極道一家の栄枯盛衰を描く連作短編集
【本】吉田修一『さよなら渓谷』-ひつとの愛のかたち
【本】吉田修一『静かな爆弾』-雪降る季節に恋愛小説などを
【本】吉田修一『パレード』-戦慄の群像劇
【本】吉田修一『春、バーニーズで』-もう一つの人生を思い描いちゃう
【本】吉田修一『最後の息子』-吉田修一さんのデビュー作を読んでみる
【本】吉田修一『太陽は動かない』-エスピオナージ+冒険小説+ハードボイル+(ちょっぴりだけ)恋愛小説
【本】吉田修一『パークライフ』-HAND IN HAND THROUGH THEIR PARKLIFE♪


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