【本】冲方丁『光圀伝』-男として憧れる光圀の生涯!
本日は、快晴につき、ゆるゆると散歩でもしようか。
昨日は一日中、閉じこもっていたからな。
冲方丁さん『光圀伝』は、徳川御三家の二代目水戸光國(のちに光圀)の生涯を描いた作品である。
テレビドラマはさておいて、事跡として思い浮かぶのは、大日本史という歴史書の修史事業を開始したことではないだろうか。
本作品では、武断政治から文治政治へのターニングポイントを歴史的背景として、光圀がどのように人間的な成長を遂げていったかに着目している。
青春小説であり、成長小説でもあるのだが、儒教思想に触れることができる教養小説の側面もある。
物語は、光圀が、ある男を刺殺するシーンから始まる。
このとき光圀齢67歳。
冒頭から、”何故”という、謎が投げかけられるのだが、答えは物語の最後までわからない。
そこから、7歳の光圀が生首を引きずって歩く、衝撃的なシーンに切り替わる。
幼くして剛毅、苛烈な光圀の生涯の物語の幕開けだ。
幼少のころから光圀を抱いていたのは、父頼房、兄竹丸(後の頼重)への反骨精神である。
兄を差し置いて、世子となった光圀は、父頼房から試させる日々を送る。
「なんで、おれなんだ」と自問する光圀。
兄への複雑な敵愾心に苛まれる。
この、「なんで、おれなんだ」が本作品の通底音として流れており、光圀の儒教精神である大義をかたちづくっていくのだ。
粗暴な少年時代の光圀は、間違いを犯しては煩悶し、時には悔悟の念にかられる。
その時々に、手を差し伸べてくれる人々のおかげで、光圀は人間としてのさらなる一歩を踏み出していくことになる。
「がんばれ、子龍(光圀の幼名)」、「がんばれ、世子どの」
この励ましの言葉を目にするたびに、とうさんは、胸を突かれてしまう。
特に、兄頼重との心の触れ合いは、とうさんにとっての泣き所をいたく刺激されてしまった。
青年光圀は、詩歌に目覚め、詩の世界で天下を取ろうと決意する。
良き理解者である最愛の妻、頑固で偏屈な友、自分を導いてくれる師、不器用な愛情を注いてくれた父。
様々な出会いと、突然の別れを通して、光圀はさらなる人間的な成長を遂げていく。
歴史という変えられない事実を前にして、とうさんは頁を繰る手を止めざるを得ない。
魅力的な登場人物たちに、別れを告げることが辛くなってしまうのだ。
物語は、藩主となった光圀の事業、光圀の大義のあり方、そしてクライマックス 冒頭の謎へと進んでいく。
人を育て、文化を育てることに腐心する光圀が描かれる。
辛い別れがあってこそ、人々の生きた証を書物として残すべきと考えたわけだね。
老成したとしても、様々な苦難を跳ね返しながら、信念を貫いていく剛毅さは幼い頃から相変わらず。
男として憧れる素晴らしい光圀の人生。
とうさんは、たまらなく羨ましい気持ちになるのである。
冲方丁さんのアツイ気持ちが伝わってくる本作品は、ボリュームがあっても決して飽きさせることがない。
再読に値する作品だと思う。
折々に精読すると、自分を見つめ直すきっかけがつかめるのではないだろうか。
とうさんにとって、とても大切な作品になった。
なお、本作品には、宮本武蔵や、『天地明察』の安井算哲がゲスト出演者のように登場する。
これもまた楽しい。
*本書はクチコミ.JPさんからの献本です。

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昨日は一日中、閉じこもっていたからな。
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冲方丁さん『光圀伝』は、徳川御三家の二代目水戸光國(のちに光圀)の生涯を描いた作品である。
テレビドラマはさておいて、事跡として思い浮かぶのは、大日本史という歴史書の修史事業を開始したことではないだろうか。
本作品では、武断政治から文治政治へのターニングポイントを歴史的背景として、光圀がどのように人間的な成長を遂げていったかに着目している。
青春小説であり、成長小説でもあるのだが、儒教思想に触れることができる教養小説の側面もある。
物語は、光圀が、ある男を刺殺するシーンから始まる。
このとき光圀齢67歳。
冒頭から、”何故”という、謎が投げかけられるのだが、答えは物語の最後までわからない。
そこから、7歳の光圀が生首を引きずって歩く、衝撃的なシーンに切り替わる。
幼くして剛毅、苛烈な光圀の生涯の物語の幕開けだ。
幼少のころから光圀を抱いていたのは、父頼房、兄竹丸(後の頼重)への反骨精神である。
兄を差し置いて、世子となった光圀は、父頼房から試させる日々を送る。
「なんで、おれなんだ」と自問する光圀。
兄への複雑な敵愾心に苛まれる。
この、「なんで、おれなんだ」が本作品の通底音として流れており、光圀の儒教精神である大義をかたちづくっていくのだ。
粗暴な少年時代の光圀は、間違いを犯しては煩悶し、時には悔悟の念にかられる。
その時々に、手を差し伸べてくれる人々のおかげで、光圀は人間としてのさらなる一歩を踏み出していくことになる。
「がんばれ、子龍(光圀の幼名)」、「がんばれ、世子どの」
この励ましの言葉を目にするたびに、とうさんは、胸を突かれてしまう。
特に、兄頼重との心の触れ合いは、とうさんにとっての泣き所をいたく刺激されてしまった。
青年光圀は、詩歌に目覚め、詩の世界で天下を取ろうと決意する。
良き理解者である最愛の妻、頑固で偏屈な友、自分を導いてくれる師、不器用な愛情を注いてくれた父。
様々な出会いと、突然の別れを通して、光圀はさらなる人間的な成長を遂げていく。
歴史という変えられない事実を前にして、とうさんは頁を繰る手を止めざるを得ない。
魅力的な登場人物たちに、別れを告げることが辛くなってしまうのだ。
物語は、藩主となった光圀の事業、光圀の大義のあり方、そしてクライマックス 冒頭の謎へと進んでいく。
人を育て、文化を育てることに腐心する光圀が描かれる。
辛い別れがあってこそ、人々の生きた証を書物として残すべきと考えたわけだね。
老成したとしても、様々な苦難を跳ね返しながら、信念を貫いていく剛毅さは幼い頃から相変わらず。
男として憧れる素晴らしい光圀の人生。
とうさんは、たまらなく羨ましい気持ちになるのである。
冲方丁さんのアツイ気持ちが伝わってくる本作品は、ボリュームがあっても決して飽きさせることがない。
再読に値する作品だと思う。
折々に精読すると、自分を見つめ直すきっかけがつかめるのではないだろうか。
とうさんにとって、とても大切な作品になった。
なお、本作品には、宮本武蔵や、『天地明察』の安井算哲がゲスト出演者のように登場する。
これもまた楽しい。
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*本書はクチコミ.JPさんからの献本です。

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