【本】伊藤たかみ『アンダー・マイ・サム』-ほろ苦青春小説は、若干不完全燃焼

Under my thumb, The girl who once had me down
Under my thumb, The girl who once pushed me around

       "Under My Thumb" song by The Rolling Stones


伊藤たかみさんの『アンダー・マイ・サム』のタイトルは、本作品中にも触れられているが、ローリング・ストーンズに同じ曲名のものがある。

アンダー・マイ・サム (講談社文庫)アンダー・マイ・サム (講談社文庫)
(2006/10/14)
伊藤 たかみ

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俺を袖にした女をやっと言いなりにしたぜ ぐらいの歌詞なのだが、本作品の内容とはまったく正反対だ。

本作品は、思うに任せない高校生たちの日常を描いた、ほろ苦い青春小説になっている。


左手の親指が長すぎる主人公の”僕”=しゅんすけ は、ある日、自分が”外れて”しまったことに気づく。

時折、実体はそのままに、精神だけがさまよい出てしまうのだ。

外れてしまっても実体のしゅんすけ は、立派にしゅんすけ を続けることができるという ちょっと変わった幽体離脱。

そして、外れたしゅんすけ は、メールの早打ちしか使い道のなかったいびつな親指を通して、人の悲しみを知るようになる。


こう書いてしまうと、スーパーナチュラルものに見えてしまうけれど、本作品のしゅんすけ の体験は、味付けにしか過ぎない。

あくまでストーリーの主軸はしゅんすけ と、しゅんすけ を取り巻く人々との関係性にある。


母親が家を出てから、ますますしっくりいかなくなったしゅんすけ と父。

家庭の問題から粗暴な行為をエスカレートさせる親友 清春。

高校を中退しフリーターとなった、しゅんすけ の初体験の相手 みゆき。

しゅんすけ の日々を追いながら、友人や家族との関係を、そして彼らの苦悩を浮き彫りにしていく。

しゅんすけ を取り巻く人々の躓きつつある人生に、しゅんすけ はなすすべがない。

しゅんすけ自身のやり場のなさと相まって、息苦しさがひしひしと伝わってくる。


ストーリーは終盤にかけて、しゅんすけ、みゆき、清春にとって、辛く悲しい展開になっていく。

本作品は、10代後半の頃の、本音のところで分かり合えないいらだたしさを、思い起こさせる(分かり合おうとすること自体が若さの象徴かもね)。


さて、タイトルの「アンダー・マイ・サム」の意味はどこにあるだろうか。

しゅんすけ は、現実を直視できるようになると、外れにくくなることに気づいていく。

結局、言いなりにできる=Under My Thumb ようになったのは、しゅんすけ自身ということになるようだ。

様々な辛い経験を経て、ちょっぴり大人になりましたということね。


本作品は、設定の妙が十分に生かしきれているかというと、疑問符は付いてしまうだろうな。

若干、不完全燃焼である。

【伊藤たかみ作品 記事一覧】
【本】伊藤たかみ『ミカ!』-あぁ、癒されるちゃう
【本】伊藤たかみ『ぎぶそん』-このあるある設定が心地よい
【本】伊藤たかみ『八月の路上に捨てる』-口角がほんのり上がるくらいの可笑しさがある



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